2013年9月2日

整理解雇について~いわきの弁護士が教える労働法~

今回は,従業員の整理解雇について簡単にご説明させていただきます。

弁護士業務でもよく相談を受け,実務的にも問題が多く出る場面です。特にいわきの経営者・中小企業の皆様には,よくお読み頂きたいと思います。

法律相談をしていると,「会社の経営が悪化したから」といった理由で従業員を整理解雇したという場面を少なからずお聞きします。震災直後のときですと,「震災で業績が著しく悪化したので」といった理由で整理解雇を行った企業もいくつかあったと思います。

通常の解雇の場合,法律上,30日以上前に解雇の予告(解雇予告通知)をするか,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があるとされています(労働基準法20条)。

しかし,整理解雇が法律上有効となるためには,上の手続をするだけでは不十分です。以下に述べる,俗に,「整理解雇の4要件」と呼ばれる要件を満たす必要があります。

整理解雇の4要件とは,①整理解雇の必要性はあるか,②整理解雇を回避するための努力を尽くしたか,③解雇する従業員の基準・選定に合理性はあったか,④労使交渉等の妥当な手続を経たか,という4つの要件を考慮要素にして,整理解雇が有効といえるかを判断するものです。この4つの要件を総合的に考慮して,整理解雇が有効といえるかが判断されます。

例として,「震災によって売上げが相当減少し,事業規模の縮小を余儀なくされたため,やむを得ず従業員を整理解雇した」というケースで説明します。

この場合,震災により売上が相当減少し,事業規模の縮小を余儀なくされたという事情があることから,①は比較的容易に認められると思われます。

ただし,その場合でも,②の中身として,例えば,残業の規制,就労時間の短縮化,従業員の配転・出向,一時休職,希望退職者の募集など,整理解雇以外の措置によって,売上減少とのバランスを取るような努力をしたかどうかがチェックされます。

また,③についても,例えば,欠勤日数,遅刻回数,規律違反歴等の勤務成績や,勤続年数等の貢献度を考慮するなど,評価する側の主観に左右されない客観的な基準を設定したかどうかがチェックされます。

さらに,④についても,労使間の十分な協議をしたか,経理資料等の開示を含めた十分な事情説明を行ったか,整理解雇の時期・規模・方法等について合意が形成されるよう努力したかどうか,といった点がチェックされます。

震災を理由とした解雇であっても,結局は使用者側の経営上の理由による解雇ですので,むしろその有効性は厳格に判断されると考えられます。

労働基準法は基本的に労働者保護のための法律であり,使用者側に厳しく解釈される場合が多いのです。

いわきの経営者・中小企業の皆様,整理解雇を行う場合には,上記のような配慮・措置を実施することをお忘れにならないよう,十分ご注意ください。

この記事を書いた人
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