いわき弁護士便り

弁護士業界の現状と今後(2019年8月)~いわきの弁護士新妻弘道のブログ~

2019年8月9日

 このテーマでブログを書かせていただくのは実に2年半ぶりになります。前回のブログ2017年2月に書かせてもらいました。今読み返してみると結構な長文でした。手前味噌ですが,基本的なポイント・弁護士業の本質を突いた記事にはなっているのではないかと思います。

 3度目となりますが,現時点での弁護士業界の現状について、自分なりの感想を書きたいと思います。皆さん気になる「弁護士の経済的基盤はどうなっているのか?」という点を中心に書きたいと思いますので,地方の現役弁護士のリアルな実感だと思ってお読みください。

 

【弁護士業界の現状。2019年8月】

 2018年度版弁護士白書において,「近年の弁護士の実勢について」という特集が組まれておりますので,こちらのデータを見ながら考えていきたいと思います。

 上記データからすると,平均値・中央値ともに,「2014年の調査時に比べて,収入は減ったものの所得は増加」という結果になっています。

 有効回答率が約7%ですので,弁護士業界の年収事情を正確に反映したものかどうかは慎重に考えないといけませんが,近年急激に悪化していた弁護士の年収事情が頭打ちになったということでしょうか。悪化している方で頭打ちという状況が大変切ないですが。

 弁護士業界のIT事情も進化しており,弁護士ドットコムを筆頭とする弁護士広告・マッチングサービスや,電話代行サービスといった弁護士業務の補助サービスも増えてきましたので,従来負担することが当然だった経費を大胆に削減し,受任事件が少なくなっても(収入が減っても)所得を維持できるスタイルがいくつか開発されているのかもしれません。同期にも,事務職員を雇用していないという弁護士もおりますので,経費を削減して斜陽化業界に対応している感じなんでしょうか。

 いわき市という地方都市で弁護士業を続けている身としては,現状,個人事件の問合せが若干減少している(離婚,相続,交通事故など典型的個人事件が少し奪い合う状況になっているのか?)という印象は持ちますが,そこまで経済的に困窮するような状況にはないというのが率直な印象です。「いわき 弁護士」で検索すると,東京や仙台の法律事務所の広告がトップページの上位5位くらいに出てきますので,この辺りも個人事件の問合せ減少に影響しているのでしょう。

 全国の弁護士の実に5割弱が東京都にいるという「東京超一極集中」の現状からすると,「東京の弁護士」と「それ以外の地域の弁護士」で状況を分けて考える必要があり,東京については二極化が相当顕著になっていると推測されます。それ以外の地域(特に人口50万人以下の地方都市)については,昔ほど高収入ではないがまだまだ困窮するほどではないよ,というのが実感ではないでしょうか。

※そういった意味で,たまにネットニュースに出てくる「食えない弁護士」的な記事は,どの地域のことを言っているのか(東京かそれ以外か)をよく吟味していただく必要があります。鵜呑みにしないようご注意ください。

 ただ,少子超高齢化社会で人口の自然減が加速している現状では,将来的に事件数は当然減少していきますので,地方においても事件の奪い合い(又は弁護士業に見切りを付けて廃業が進む)という事態が起きてくることは避けられないと思います。地方の中小企業もなかなか経営改善に難儀していることから,法務リスク対応(≒顧問弁護士の依頼)にコストをかけることができる企業数も,今後,相対的に減少していくか,少なくとも現状程度の企業数で推移していくのではないでしょうか。その意味では,顧問契約も,将来的には奪い合いという事態になるかもしれません。

 そういった競争に巻き込まれないためには,結局は弁護士のセルフブランディングが重要になってくるのだと思います。「どういった事件を取り扱っているか?」,「どういった使命を掲げて日々の業務に当たっているか?」,「クライアントあるいは地域(地元)にどのような価値を提供しているか?」という辺りを積極的に情報発信して,数個の分野において当該地域のトップランナーになっていくことが必要になっていくと思います。

 この分野選択の際に大切なことは,「自分が本当にやりたいと思う分野,信念を持ってやれる分野を選ぶ」という点に尽きると思います。「どこなら儲かるか,どこなら安定して食っていけるか」という点は,企業ドメインor事業ドメインを設定する上で考慮すべきであることは当然ですが,この点だけを考えて分野を選択することは絶対に避けるべきです。

 私の場合は,「地元いわき市のために,良質な法的サービスの提供を通じて,地元いわき市で頑張る中小企業・中小事業者の力になる」という使命を掲げて,企業法務,事業承継,内部通報の外部窓口等を専門分野に設定しておりますが,そういった弁護士としての自身のアイデンティティをしっかり見つめ直して手掛けていく分野を選定していかないと,ストレスが溜まって精神的に苦しくなっていくばかりだと思います。

 「自分が弁護士になってこの地域で仕事をしている理由はここにある!」という確固たるものを持つことが非常に重要であり,そのような信念を継続して情報発信していけば,共感してくれる方が相談者を紹介してくれるようになると思いますので,ぶれずにやり続けることが重要だと感じています。