2016年6月1日

中小企業の事業承継~企業法務なら磐城の弁護士新妻弘道・磐城総合法律事務所へ~

事務所報Vol.5のコラムで紹介させていただいた「中小企業の事業承継」については,今後も大きな問題として多くの需要が維持されていくだろうと思われます。

そこで,中小企業の事業承継の大まかなイメージ・ポイントをつかんでいただくため,上記コラムの内容を本ブログでもご紹介(引用)させていただきます。

全体的な注意点の頭出しという内容になっておりますが,いわき市内の中小企業の皆様(特に後継者不在や承継方法に悩んでいらっしゃる経営者の皆様)は,ぜひ熟読していただければ幸いです。

なお,中小企業一般の法律相談についてはこちらをご覧ください。

(↓ 以下,引用部分)

以前から中小企業の重要なテーマと認識されており,しかしながら一向に解決していないと思われる事業承継について,基本的ポイントをご紹介します。最低限の知識を確認していただければ幸いです。

1 「何を」,「誰に」,承継させるのか?の検討

⑴ 事業承継と言われたとき,多くの方は何をどうするのかイメージが掴めないと思います。事業承継の目標は,会社の経営権」,「議決権」,「財産を後継者に円滑に引き継がせることにあり,最も基本的には,代表取締役の地位」,「会社の株式」,「事業用資産を後継者に承継させることになります。

⑵ 承継させる相手としては,中小企業の場合,基本的に親族になり,ごく例外的に第三者(親族外の役員,従業員等)になると思われます。

2 「いつ」,「どうやって」,「いくら」で承継させるのか?の検討(税金負担への配慮が必要)

⑴ 会社の株式を承継させるに当たっては,最も簡便な方法は株式譲渡になります。地方の中小企業の場合,大半が株式に譲渡制限(株主総会又は取締役会の承認がないと株式を譲渡できないという制限)をかけていると思いますが,取締役も親族で構成されていることが大半ですので,譲渡の承認は比較的簡単に取れると思います。ただし,株式評価額が高い場合,多額の株式取得資金が必要となり,仮に贈与すれば多額の贈与税が課税されますので,いずれにしても株式評価を下げるための対策(後述)が必須となります。

 その他の手段としては,遺言による株式取得者の指定自己株式の取得(会社が現オーナーの株式や後継者以外の株式を取得し,後継者の議決権比率を高める方法)等がありますが,遺言については遺留分侵害(後述)に注意しなければならず,自己株式の取得については会社法上の規制をクリアしなければならないという問題があり,注意が必要です。

⑵ 事業用資産を承継させるに当たっては,主たる事業用資産を会社が所有していれば,そのまま会社所有として問題ないでしょう。敷地や事務所建物が個人(オーナー)所有で賃貸借契約を結んでいる場合等は,相続手続において後継者の単独所有にしてやる必要があるでしょう。相続税の負担を考慮し,会社に現預金があるようであれば,相続開始前に会社が事業用資産を買い取ることも検討すべきです。

3 どのようにして株式評価を引き下げるかを検討する

 ここが中小企業の事業承継を考える上でメインテーマになると思われます。中小企業の大半は非上場であり,非上場の株式の評価方法は,類似業種比準方式純資産価格方式の2種類があります。いずれにせよ,業績が好調で資産が潤沢な会社ほど株価も高く評価されますので,業績が良くない時期又は資産状況が悪化した時期に株式を承継させるよう計画を立てておく必要があります。

 典型的な方法としては,役員退職金を支給したり高収益部門を分社化したりして利益が引き下がる時期を発生させる方法や,不動産を取得したり借入債務を負担したりして資産状況が悪化する時期を発生させる方法があります。

4 遺留分侵害への配慮

 特に相続によって株式を取得する場合に問題となりますが,民法上の遺留分侵害に注意する必要があります。遺留分とは「遺産として留保すべき分」という意味と考えてもらうと分かりやすく,遺産を特定の後継者に承継させた場合,他の相続人が,「遺産の一定割合分を自分によこせ」と主張できる権利です。

 株式以外の遺産が多くあれば,株式以外の遺産を他の相続人に渡すことで解決できるでしょうが,遺産全体に占める株式の割合が高い場合には,遺留分に対する配慮が必要となります。

 具体的な対策としては,経営承継円滑化という特例法に定める除外合意や固定合意という手段を使って遺留分侵害が生じないようにする方法があります。

5 複数の専門家を関与させる

 事業承継は,「後継者の発見」など法律家だけでは解決できない問題もあり,弁護士,税理士,社労士,司法書士,銀行,経営コンサルタントなど諸業者が協力して解決していく必要がある分野です。

 地方の場合,顧問税理士の先生,銀行あるいは経営コンサルタントに相談することが多いのではないかと思いますが,それぞれの業種ごとに得手不得手がありますので,複数の専門家を関与させ,全員でベストの解決策を目指していく必要があります。ぜひ弁護士のご利用もご検討ください。

この記事を書いた人
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