いわき弁護士便り

相続放棄・限定承認について~いわき市の法律相談なら磐城総合法律事務所・弁護士新妻弘道へ~

2018年7月24日

 久しぶりのブログ更新となりました。決してサボっていたわけではなく,業務が立て込んでしまったためなかなか更新できませんでした。おかげさまで,顧問先様やお知り合いの方,以前のクライアント様からご紹介いただく案件もだいぶ増えてきました。

 さて,今回は,意外に勘違いが多い相続放棄,それと,あまりなじみがないと思いますが相続の限定承認という2つの制度について書きたいと思います。

 例えば,父親が亡くなったが,父親には多額の借金があり,そのまま相続してしまうと多額の負債を抱えてしまうという場合に,これら2つの制度を使うことを検討することになります。

 この場合,まずは父親の遺産として何があるのかを細かく正確に調査することが必要です。「どんな遺産がどのくらいあるのか?」「相続人は誰か?」という2点は,相続問題を処理する上で明らかにすべき必須事項ですので,しっかり調査してください。これが分からないと弁護士も具体的なアドバイスのしようがありません。

 遺産調査をした結果,判明した父親のプラスの遺産(積極遺産)の中に,自分が相続したいものがあるか否かによって,皆さんが取るべき対応は変わってきます。

 

① 相続したい積極遺産がない場合

 この場合は,父親のマイナスの遺産(消極遺産)を相続しないようにするため,相続放棄という手続を取ります。父親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄の申出をしてください。家庭裁判所に申出をしないと相続放棄はできませんのでご注意ください!

 この相続放棄ができる期間には民法上の制限があり,原則,自分のために相続開始があったことを知った時(①被相続人の死亡を知り,かつ,②それによって自分が相続人となったことを知った時)から3か月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。なお,家庭裁判所に申し立てて期間を延長してもらうことも可能です。

 期間内に相続放棄しない場合,ごく例外的な場合(相当な理由により遺産が全くないと信じた場合等)を除き,相続を承認したとみなされ,消極財産も含めて全ての遺産を相続してしまいますので,必ず期間を厳守するよう注意してください。

 

② 相続したい積極遺産がある場合

 例えば,父の所有していた実家の土地建物だけは何としても相続したいという場合が典型例として考えられます。この場合には,限定承認という手続を取る必要があります。限定承認とは,簡単に言うと,「消極遺産も含めて全ての遺産を相続する。ただし,相続した債務の返済の点に関しては,相続した積極遺産の範囲内でのみ行えば足りる。」とする制度です。相続した積極遺産の額を限度として相続債務を返済すれば足り,残債務について自分の固有財産から返済する必要はありません。

 この限定承認手続の中で,①競売によって相続したい遺産を競り落とすという方法,または,②家庭裁判所が選任した鑑定人に遺産を鑑定してもらい,その鑑定額で買い取る方法のいずれかの方法を取ることによって,相続したい積極財産を取得することができます。

 ただし,限定承認手続は,官報に公告を出したり相続債権者を調査したりしなければならず,手続が非常に複雑です。また,時間も費用も相当かかります。さらに,そもそも民法の条文自体が非常に少なく,「該当する条文がなく,どう手続を進めていけばいいか分からない」という局面が多く生じます。そのため,限定承認手続を利用する場合には,必ず弁護士に相談することをお勧めします。