原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介申立て
原子力損害賠償紛争解決センターという公的機関に対して和解仲介申立てを行うもので,仲介委員や調査官という中立的な第三者が関与し,和解案を提示する手続になります。
参考URL http://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/1329118.htm
和解仲介手続き(ADR)の流れ
1和解仲介申立書の作成,送付
和解仲介申立書に必要事項を記入し,必要な証拠を添付して,東京にあるセンター事務所に郵送します。
ADR申立ての受付けは東京事務所のみで行っていますので,基本的に東京事務所に郵送します。
※ADR申立てを行う場合紛争解決センターに対して申立て手数料を支払う必要はありません。
2仲介委員,調査官の選任の通知
事件を担当する仲介委員,調査官と呼ばれる第三者機関が決定され,通知されます。
※この仲介委員・調査官は,東京の弁護士の方がなられる場合が多いです。
3東京電力の答弁書の提出
申立書に対する東京電力の見解が記載された答弁書という書面が提出されます。
東京電力が支払を認める金額,認めない金額,それらの理由などが記載されています。
4追加の主張書面,証拠の提出
必要に応じ,仲介委員から追加の主張,証拠の提出が求められる場合があります。
5口頭審理期日の実施
ある程度主張と証拠がそろった段階で,仲介委員が被害者から直接話を聞く口頭審理期日が開かれます。
この口頭審理期日において,例えば,精神的苦痛に関する事実関係を伝えたりします。
※現在は,仲介委員らが直接福島に出向くのではなく,電話会議あるいはテレビ会議で実施されているケースが多いようです。
直接話を聞いてもらいたい場合には,福島の事務所に出頭するよう求める必要があります。
※請求の内容によっては,仲介委員や調査官が現地調査・視察を行う場合もあります。
現地の状況を知ってもらいたい場合には,現地視察を要請することをお勧めします。
6和解案の提示,和解の成立
紛争解決センターから被害者と東京電力の双方に対し,和解案が提示されます。
双方が和解案を受け入れる場合,和解成立となります。
※双方または一方が和解案を拒否した場合,和解は成立せず,ADR手続は終了となります。
※紛争解決センターの職務は和解案の提示までになりますので,和解書の作成は当事者間で直接行われます。
和解仲介申立て(ADR)のメリット・デメリット
- メリット
- 仲介委員や調査官の関与,説得により,中間指針以上の和解案を引き出せる可能性がある。
紛争解決センターに対する手数料は不要である。
訴訟に比較すれば迅速な解決が可能(ただし現在は,申立て件数が多いため最低でも6か月程度を要します。
当初の目標は,申立てから3か月以内に和解案を提示するということでしたが,この目標が達成されているとは言い難い状況です。)。 - デメリット
- 東京電力が和解案を受諾しない場合,和解は成立しない(和解案を強制的に受け入れさせることはできない)。
直接請求に比べると,資料や証拠を多く提出する必要がある。
仲介委員や調査官の原発被害への理解の程度によって,結論に幅が出る場合がある。