損害賠償額の計算方法

主な損害項目について、裁判基準でどのように損害額を算定するかをご説明します。

治療費

傷害の治療に要した費用は、必要かつ相当な治療と認められる限り、実費全額が賠償されます。
針灸、マッサージ、温泉治療などは、医師の指示があるなど有効かつ必要な場合に限り賠償されます。
しかし、症状固定後の治療費は、原則として賠償対象になりませんので注意が必要です。

症状固定とは、分かりやすくいうと「治療を続けても、症状がこれ以上は良くならない状態に落ち着いたこと」を意味します。
したがって、症状固定後に治療をしても基本的に治療行為としての意味はないため、賠償対象にはならないとされています。
例外的に、リハビリ費用等は認められる場合があります。

通院交通費

自家用車を利用した場合は、実費相当額が賠償されます。
自家用車以外を利用した場合は、基本的に電車、バスの料金相当額となります。

タクシーを利用した場合がよく問題になりますが、公共交通機関を利用するためには自宅から長距離を歩かなければならないとか、電車やバスで立ったまま移動することは困難など、生活環境や症状等からタクシー利用が相当とされる場合でない限り、タクシー代は賠償対象にならないので注意が必要です。

休業損害

有職者の場合

基本的に、事故前の収入を基礎とし、休業による現実の減収分が賠償対象となります。
具体的には、事故前3カ月分の総支給額(税込額)をベースに1日当たりの収入額を算出し、それに休業日数をかけて損害額を算定します。
事業所得者の場合には、事故前の確定申告所得額を基礎収入として計算を行います。青色申告控除がなされている場合は、控除前の金額を基礎とします。

無職者の場合

生徒・学生の場合、アルバイトをしていたのであれば、現実のアルバイト収入を基礎として休業損害が認められます。
失業者の場合、労働能力と労働意欲があり、就労の高い見込みがあれば(就職が内定していた、治療期間が長期になってしまったために就労できなかっただけ等)、休業損害が認められます。

後遺症による逸失利益

基本的な算定式は、「基礎収入×後遺症による労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」という形になります。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための数値です。

この中間利息の控除という考え方について、簡単にご説明します。
逸失利益を受け取る場合、本来であれば一定期間の間に少しずつもらうはずだったお金(毎月の給料等)を、いっぺんに受け取ることになります。
そうすると、そのいっぺんに受け取ったお金を被害者が運用することで、被害者が利息を得られる可能性があります(預金して利息が付く、積み立てて利息が付く等が典型)。
しかし、この利息は本来、事故がなければ発生しなかったはずのものですから、被害者は、この運用利息分を余分な利益として得ることになってしまいます(と法的にはみなすのです)。
そこで、中間利息の控除という方法によって、この余分に得ると見込まれる利息分を差し引く必要があり、その機能を果たすのがライプニッツ係数という数値になります。

有職者の場合、基礎収入は、事故前の現実の収入となります。年少者や学生の場合は、賃金センサスという平均賃金一覧表で基礎収入が決められます。
労働能力喪失率は、後遺障害の等級に応じ、労働能力喪失率表によって決められます。
一番軽い14級の場合は5%、最も重い1級の場合は100%とされています。

死亡による逸失利益

基本的な算定式は、「基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」という形になります。
ライプニッツ係数の考え方は、後遺症の逸失利益と同様です。労働能力喪失率をかけることはありません。死亡しているので喪失率は当然100%(×1)だからです。
労働能力喪失率という考えの代わりに、生活費控除という措置が取られます。

死亡によって、被害者は、本来得られるはずだった収入を受け取れなくなったという損害を受けますが、その反面、被害者は、本来支払うべきであった生活費の支出を免れたという利益も得ています。
そのため、生活費の支出を免れたという利益の部分を差し引く必要があり、そのために生活費控除率という数値が使われます。
ちなみに生活費控除率は、一家の支柱の場合と女性(女児・主婦を含む)の場合は30~40%、男性単身者(男児を含む)の場合は50%とされています。

基礎収入の算定方法も、基本的に後遺症の逸失利益と同様です。

死亡による慰謝料

いくつかの基準がありますが、いずれも、死亡した被害者本人の慰謝料と、遺族・近親者の固有の慰謝料とを合計した金額になります。
一例としては、一家の支柱の場合は2700~3100万円、一家の支柱に準じる場合は2400~2700万円、その他の場合は2000~2400万円とされています。
事故態様が悪質だったり、事故後の行動がきわめて悪質だったりした場合は、慰謝料が上乗せされる場合もあります。

傷害による慰謝料(入通院慰謝料)

死亡慰謝料同様、いくつかの基準がありますが、入院期間と通院期間に応じて金額が定められています。
一例としては、入通院期間がいずれも1か月の場合は47~88万円、入院1か月・通院2か月の場合は62~115万円などとされています。
通院期間に比べて実際の通院日数が少ない場合は、通院期間が修正されます(実際の通院日数×3.5)。

後遺症による慰謝料

これもいくつかの基準がありますが、認定された後遺症の等級に応じて金額が定められています。
一例としては、1級の場合2700~3100万円、12級の場合250~300万円、最も軽い14級の場合90~120万円とされています。

物損

車両破損の損害(修理代等)

車両の修理代が事故当時の車両の時価額を下回る場合は、修理代相当額が損害となります。
逆に、修理代が車両の時価額を上回る場合(全損といいます)は、車両の時価額から事故車両の売却代金を差し引いた額だけが損害となります。
なお、全損の場合で車を買い替えたときは、登録手数料等の費用の一部も損害になります。

評価損

修理しても外観や機能に欠陥を生じる場合や、事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められます。
損害額は、修理代の一定割合(10~50%程度)で算出されるケースが多いです。

休車損

営業車の場合、相当な買い替え期間中、または修理期間中、認められます。
損害額は、「1日当たりの損害額×休車期間」で算出されます。有休車両が多数あり、これを代替させることが可能かつ容易な場合には、休車損が否定されることもあります。

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