最近勉強した判例を簡単にご紹介いたします。
最高裁平成25年6月6日判決です。勉強するのが遅いだろうというツッコミはご容赦ください。
※判決文は,こちらから
こちらの判例ですが,取り上げている最大の問題は,「債権の一部の支払を求めて訴訟提起した場合,訴訟提起しなかった残りの債権部分にどのような影響を及ぼすか。」という点です。より具体的に言いますと,「残りの債権部分についても消滅時効が中断するのか。」という点を取り上げています。
例えば,XさんがYさんに1000万円の債権を持っていると仮定します。
この場合,1000万円をそのまま請求するのが通常ですが,色々な理由で債権の一部だけ(例えば300万円だけ)を請求する場合がります。
例としては,不法行為に基づく慰謝料請求の場合などで,こちらが妥当と考える金額が認められるか不透明なため,印紙代を節約する意味も兼ねて一部だけ請求する,相手方も債権を持っていて相殺が見込まれるため,あらかじめ相殺される分を差し引いて一部のみ請求する,などのケースがあります。
この場合,訴訟で請求した300万円については,請求する意思を表明したといえることから,消滅時効が中断することは争いがありません。(※)
(※)消滅時効の中断とは,進行していた消滅時効がリセットされ,再び0から進行を開始することを言います。
では,この場合,請求しなかった700万円の部分についても,消滅時効は中断するのでしょうか?
この点につき,最高裁平成25年6月6日判決は,特段の事情がない限り,残部(=請求しなかった700万円部分)については,裁判上の催告として暫定的な時効中断の効力が生じるとしました。債権者は,訴訟終了後6か月以内に訴訟提起などの措置を講ずることにより,確定的に消滅時効を中断させることができる,としました。
裁判所の理由づけを簡単に説明すると,一部請求の場合でも,債権者としては,残部についても権利行使する意思を表明したと評価できることから,特段の事情がない限り,残部についても裁判上の催告(=支払えという催促)を行ったといえるとしました。
ただし,民法153条により,裁判上の催告は暫定的な時効中断の効力しか持っていません。
※民法153条は,こちらをご覧ください。
そのため,暫定的に生じた時効中断の効力を確定させるため,民法153条の規定に従い,6か月以内に所定の措置(訴訟提起,支払督促の申立て,調停申し立てなど)を講じる必要があるとしました。
一部請求の場合,訴訟提起をしたからと安心せず,残部については時効が暫定的にしか中断していないことを自覚して,適切な措置を取る必要があります。
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磐城総合法律事務所 代表弁護士:新妻弘道