いわき弁護士便り

弁護士の専門分野~いわきの弁護士新妻弘道の雑感~

2015年6月9日

「何が専門なの?」

いわきで法律事務所を開所して早2年以上が過ぎましたが、様々な方とお付き合いさせていただく中でこういったご質問を受けることが多くなってきました。

こういったご質問を頂戴したとき、最近の私の答えは概ね決まってまして、「全部です。」か「専門でない分野は特にないです。」と答えるようにしています。

これだけ読むと、「コイツは何て自信過剰な弁護士なんだ!?」と思われるかもしれません。が、このような答え方をする(せざるをえない)理由がちゃんとあります。

「専門は何ですか?」という質問、実は、弁護士(特にいわきのような地方都市で仕事をしている弁護士)にとっては非常に答えにくい質問だと思います。

いわきのような地方都市の場合、大半の弁護士はいわゆる「町弁」といわれる仕事のやり方をしていまして、離婚、相続、交通事故などの一般民事事件、中小企業の企業法務案件、さらには刑事事件まで、非常に幅広い案件を手掛けています。特定分野のみを受任してそれ以外は受けないという業態はあまり採用しませんので、弁護士サイドからすると、一般的な意味での「専門分野」(=他の弁護士に比べ、際立った経験・知識を有している分野又は優位性を保てる程度に経験・知識を有している分野)と自己評価できるほど、事件が偏らないことが一般的です。

また、いわき市の市場規模を考えても、専門分野に特化することはなかなか厳しいものがあります。

いわき市の人口は30万人ちょっとで、法人数も劇的に多いわけではありません。そうした中で特定分野のみ特化して仕事をした場合(専門外の事件は基本的に受けないとした場合)、事務所経営を維持していくことは相当に困難と思われます。

交通事故、離婚、相続程度であれば何とか事件数を確保できるでしょうが、極端な話、医療過誤を専門分野に据えた場合、1年で相談が20件あれば良いほうでしょうから、そのわずかな相談件数のさらに何件かしか受任できないことになります。そうすると、事務所経営を維持するためには、下手をすると1件当たり数百万円という事件単価を設定しなければならなくなります。しかし、(その弁護士に際立った弁護実績や書籍発行実績などがない限りは、)そんな金額で依頼する方はいわき市内には皆無だと思います。

 

さらに、いわきのような地方都市の場合、コミュニティ自体が小規模で人的ネットワークが緻密なため、「~が専門です。」などと安易に答えてしまうと、その案件ばかり依頼が来てしまうリスクもあります。

実は、私が専門分野を「全部です。」と答える最大の理由はここにあります。弁護士があえて「専門分野は~です。」と答える場合、弁護士サイドとしては、「特にこの分野は、他の弁護士に比べ、少なくとも優位性を保てるくらいの経験・知識がありますよ。」という意味で答えることが多いと思われます。別に、「それ以外の分野の経験・知識は一般的な弁護士以下ですよ。」という意味までは含んでいません。しかし、質問者の捉え方や回答の言い回しによっては、「専門分野以外はあまり出来が良くないんだな。」とか、「専門分野以外は苦手なんだな。」とかの誤解を与えてしまうおそれがあり、万が一そのような誤解が生じた場合、それ以外の案件が依頼されにくくなってしまう危険があります。

そういったリスクがありますので、私はあえて、専門分野は「全部」とお答えしています。せっかく弁護士として幅広い案件を手掛けられる立場にいるのに、専門分野を設定することによって自分から活動領域を狭めるようなことは勿体ないと思っているので、あえてこのような強気な回答をしております。

地方都市の弁護士の場合、私と同様、基本的に案件による制限は設けていないと思いますので、どうしても質問したい場合は、むしろ「手掛けない案件(苦手意識がある案件、嫌いな案件)はありますか?」と質問されたほうが、弁護士としても回答しやすいかもしれません(笑)。