過失相殺とは
交通事故の発生について被害者側にも過失がある場合、この被害者側の過失分を損害額から差し引くことを言います。
例えば、被害者に過失が3割あるという場合は、算定された損害額から3割を差し引くことになります。
過失割合の決め方
交通事故の場合、過失割合については、事故態様ごとに細かく決められています。
事故態様ごとの過失割合を決めている最も代表的な本が、東京地裁の研究会が公表した、「民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂4版)」(別冊判例タイムズ16号)という本で、実務では概ねこの本によって過失割合が決定されます。
四輪車対四輪車、四輪車対二輪車、四輪車対歩行者などの事故当事者ごとの分類がなされているほか、対向車同士の事故、交差点における事故、信号機のない交差点における事故など道路状況ごとの分類も細かくなされています。
被害者「側」の過失について
過失相殺をする際の過失には、被害者本人の過失だけでなく、被害者と特別の関係にある者の過失も含められます。これを被害者「側」の過失と言います。
判例上は、「被害者と身分上又は生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」の過失も含めることができるとされおり、基本的には、夫婦や同居の親族など密接な関係を持った者の過失のみが考慮されます。
被害者側の過失が肯定される例としては、内縁の夫婦が挙げられます。
内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転していた車がほかの車と衝突事故を起こしたため、内縁の妻が加害者に損害賠償請求をしたという事案で、裁判所は、「内縁の夫婦は身分上、生活関係上一体をなす関係にある」から、損害賠償額を定めるにあたっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると判示しました。
他方で、近時の判例では、共同で暴走行為を行っていた同乗者の過失を考慮できるとするものも出ており、夫婦等の密接な関係を持っていない場合にも公平の観点から過失相殺を認める場合がありえます。