不動産の賃貸借契約トラブル
「敷金が返ってこない」,「契約解除により建物からの退去を求められている」,「一定期間だけ不動産を貸したいがどうしたらよいか」など,賃貸借契約に関するトラブルは多くあります。
これらのトラブルを適切に解決したり,無用なトラブルを生じさせないためには,関係する法律と判例を正しく押さえておく必要があります。
1.まずは契約書がどうなっているかチェック!
当事者間で契約を結んだ場合,契約書上の条項が,原則として民法などの法律に優先して適用されます。
例外は法律が定める強行法規というもので,法律上の強行法規に反する約束は無効になり,強行法規が優先適用されます。
賃貸借トラブルを解決するための第一歩は,契約書上の条項が優先的に適用されるのか(強行法規に違反して無効ではないのか),それとも民法や借地借家法の条文が優先されるのかをチェックする必要があります。
2.判例による修正がなされている場合がある!
例えば民法上は,賃借人に賃料の不払いがあれば契約を解除できるとされていますが,この点は判例で修正されており,単に賃料不払いがあるだけでは足りず,不払いによって信頼関係が破壊されていなければなりません。
賃貸借トラブルを解決するためには,判例理論も正しく押さえる必要があります。
3.自力救済は禁止されている!
賃料の不払いがあるからと言って,賃借人の家財道具を勝手に搬出したり鍵を替えたりすることはできませんし,敷金が返ってこないからと言って強制的に取り立てることはできません。
このような自力救済を日本の法律は認めておらず,最悪の場合,刑事罰に処される可能性もあります。
境界確定などの近隣トラブル
不動産に関する近隣トラブルにおいて最も多いのは,特に地方の場合,土地の境界はどこか,境界を越えて家や塀を建てていないかなどの境界に関するトラブルです。
境界紛争の解決手段としては,以下の手段があります。
1.当事者間の協議による分筆・合筆登記
当事者間の協議で境界を変更・確定する方法です。
境界は公法上定められているもので,当事者が合意したからと言って当然に変更されるものではありません。
そのため,当事者の合意で境界を変更する場合,いったん2つの土地を合筆し(登記上1つの土地にし),変更したい位置に新たに分筆線を引いて分筆する必要があります。
2.筆界特定手続
土地同士の筆界(境界)が明確でないときに,筆界の位置を特定したり土地の範囲を定めたりする行政手続になります。
登記上の所有名義人が,筆界特定登記官という行政機関を相手に申し立てるもので,隣地所有者を相手にするものではありません。
筆界調査委員という専門家(土地調査家屋士)が関与して筆界を特定します。
3.境界確定訴訟
裁判によって,公法上の筆界(境界)を確定させる訴訟になります。隣地所有者を相手方にして訴訟提起します。
隣地の一部を時効取得したという場合も境界確定訴訟を提起することができます。
公図や地積測量図などの証拠を基に,裁判官が公法上の筆界を確定させることになり,判決の効果は訴訟当事者以外の第三者にも及びます。
隣地所有者以外の第三者との関係でも境界を明確にしておきたい場合は,境界確定訴訟を起こすことになります。