相続人の順位
現在の民法における相続人の順位についてご説明します。
なお、「現在の民法」と限定したのは、昭和22年5月2日まで生じた相続については、昔の民法の「家督相続」という制度が適用されるためです。
「家督相続」とは、簡単に言えば、戸主が死亡した場合に家督相続人という特定の人(普通は長男)が単独で全ての遺産を承継する制度です。
したがって、相続開始の時点によって相続人が変わってきますので、一応注意しておく必要があります。
1.配偶者は常に相続人になります。
相続開始時(被相続人の死亡時)に配偶者がいれば、常に相続人になります。
当然ですが、法律上の婚姻をした配偶者のみが相続人になります。内縁の夫や妻は相続人にはなりません。
2.子ども、直系尊属(父母)、兄弟姉妹については優先順位が決められています。
配偶者と違い、子ども、直系尊属(父母)、兄弟姉妹については優先順位があり、①子ども>②直系尊属(父母)>③兄弟姉妹という順番になります。
①子どもがいれば子どものみが相続人になり、②子どもがいなければ直系尊属(父母)のみが相続人になり、③子どもも直系尊属(父母)もいなければ兄弟姉妹のみが相続人になる、ということです。
3.「代襲相続」という制度に注意してください。
代襲相続とは、例えば、相続開始前に法定相続人が死亡した場合(父の生存中にすでに子が死亡しており、その後に父が死亡して相続が開始した場合など)に、その法定相続人の子(前の例でいえば孫にあたります)が代わりに相続人になるという制度です。
この代襲相続は、死亡した相続人が①子ども、または③兄弟姉妹の場合に認められます。配偶者や②直系尊属(父母)の場合には代襲相続は認められません。
また、代襲相続が認められるためには、代襲者(代わりに相続人になる人)が、被相続人の直系卑属でなければなりません。
上の例でいえば、孫が父の直系卑属(直系の後世代)でなければならないのです。
したがって、例えば上の例で、子どもが養子であり、孫が養子縁組前に生まれていた連れ子だったという場合は、孫は父と直系関係にないので、代襲相続は発生しません。
相続分について
相続人の順位に従って調査した結果、相続人が誰か分かったとして、各相続人がいくらの割合で遺産を相続するのでしょうか。
場合を分けて説明します。
1.配偶者と子どもが相続人の場合
配偶者と子どもで2分の1ずつ分けます。
子どもが複数いる場合、2分の1をさらに平等に分けることになります。
ただし、非嫡出子(婚姻関係にない夫婦から生まれた子)の相続分は、嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子)の相続分の2分の1になります。
2.配偶者と直系尊属(父母)が相続人の場合
配偶者が3分の2、直系尊属(父母)が3分の1を相続します。
直系尊属(父母)が複数いる場合、3分の1をさらに平等に分けることになります。
3.配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
兄弟姉妹が複数いる場合、4分の1をさらに平等に分けることになります。
4.配偶者がいない場合
相続人(子ども、直系尊属(父母)、兄弟姉妹のいずれか)で平等に分けることになります。
相続人の確認方法
相続人を確認するには、被相続人の①戸籍謄本又は除籍謄本と、②改製原戸籍を取得しなければなりません。
改製原戸籍とは?
戸籍は、ときどきある法律改正によって何度か作り変えられています(これを「改製」といいます)。
そして、法律改正によって作り変えられる前の基となった戸籍を改製原戸籍というのです。
なぜ改製原戸籍を取る必要があるかというと、改製された後の戸籍には、改製される以前に死亡や結婚などで戸籍から除外された者が反映されないためです。
つまり、改製前に子どもがいたがすでに死亡していたという場合、改製原戸籍には死亡した子どもの記載がありますが、改製後の戸籍にはその子どもの記載は一切なされません。
そのため、改製原戸籍まで取ってみないと正確な相続人が確定できないのです。
遺産の範囲
被相続人が死亡時に有していた財産(負債を含みます)は全て遺産になります。
不動産、現預金、有価証券、債権、動産類など全てです。
なお、よく勘違いされるものに、契約者が被相続人で、受取人が法定相続人となっている生命保険金があります。
この場合は、被相続人の死亡がきっかけとなって相続人が保険金という固有の財産を取得することになるため、生命保険金は遺産にはなりません。
自筆の遺言があった場合の対処(遺言の検認について)
被相続人の自筆による遺言があった場合は、その保管者において、速やかに家庭裁判所に遺言書を提出し、「検認」という手続を受ける必要があります。
「検認」という手続は、遺言書が、どのような用紙にどのような筆記用具で書かれ、どんなことが書かれてるのか等の形式的な事実を確認する作業で、この手続を経ることにより、遺言書の偽造や変造を防ぐことができます。一種の保全手続のようなものになります。
偽造・変造の防止が目的ですから、遺言書が封印されている場合は、家庭裁判所において相続人などの立会いの下で開封しなければなりません。
なお、遺言書の偽造や変造を防ぐことが目的ですので、公正証書による遺言の場合は検認を経る必要はありません。
公正証書化していることですでに偽造や変造の危険は防止されているからです。
税金に注意
多額の遺産を相続すれば、場合により相続税が発生する場合があります。また、生前贈与を受けていた場合には贈与税が課される場合もあります。
相続の方法を決めるにあたっては、税金がどのようにかかるかについても注意する必要があります。