2023年8月9日

独占禁止法、下請法、建設業法の解説(1)

今回から数回に分けて、皆様の事業にも関係することが多い①独占禁止法、②下請法、③建設業法についてご紹介させていただきます。

1回目となる今回は、はじめに各法律の関係性をイメージしやすいよう簡単にビジュアル的にご説明した上で、①独占禁止法について解説させていただきます。

 

1.独占禁止法、下請法、建設業法の関係性について

・これらの法律が関係しそうなご相談をお受けする場合、各法律の関係性について、私はざっくり以下のようなイメージを持っています。

下記画像をご参照ください。

・大きなイメージとしては、①公正・自由な競争を促進するための一般法として独占禁止法があり、②その補完法(特別法)として下請法があり、さらに下請取引の適用対象を絞った補完法(特別法)として建設業法がある、という流れになります。

・そのため、思考過程としては、

①公正・自由な競争を阻害しそうな行為がなされていれば、どのような取引類型であってもまずは独占禁止法の規定で解決できないかを検討する、

②取引類型が下請取引ならば、下請法の規定で解決できないかを検討する、

③下請取引が建設工事に関するものならば、建設業法の規定で解決できないかを検討する、

④上記①~③は基本的に相互に排斥しあう関係ではない(規定の併用適用が基本的に可能である)ため、当該事案について最もシンプルに当てはまる法律(規定)、あるいは最も抑止力が強いであろう法律(規定)を選択する、

という流れを経て、アドバイスさせていただくことを多いです。

・どの法律も、とっつきにくい専門的法律というイメージがあると思いますし、実際、規定の内容や構造、当該規定を当該事案に適用できるか等の点についてはかなり複雑でそれなりの検討が必要となります。しかし、ひとまず上記のようなビジュアル的なイメージを持っていただくだけでも、苦手意識が薄れて理解が早まると思われます。

 

2.独占禁止法の概要

※詳細については、こちらの独占禁止法の全体像の解説記事と、公正取引委員会の解説ページをぜひご確認ください。

 

・上記のとおり、独占禁止法(独禁法)は、公正かつ自由な競争の促進という目的を達成するため、私的独占の禁止、不当な取引制限の禁止、カルテルの禁止、不公正な取引方法の禁止といった様々な手段を用いて、わが国における自由経済秩序の維持・促進を図っています。

・規制対象や行為類型は多岐に渡っていますが、ご相談を頂く中でよく問題となるのは、以下の点になります。

 

⑴ 優越的地位の濫用

・優越的地位にあることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に独禁法2条9項5号記載の濫用行為を行った場合、課徴金の対象となります。

・取引の相手方との関係で相対的に優越した地位にあれば足り、相手方との取引継続が困難になることが経営上大きな支障を来すため、相手方から著しく不利益な要請等がなされても受け入れざるを得ないような状況(取引を打ち切られる等すると非常に困る状況)にあれば、優越的地位は認められると解されています。

・濫用行為の典型例としては、①購入・利用の強制、②経済上の利益提供の要請、③不利益な取引条件の設定・変更等、④商品等の受領拒否、返品、代金支払遅延等があります。

・「正常な商慣習に照らして不当に」行われることが要件ですが、現に存在する商慣習に合致しているからといって行為が直ちに正当化されることにはなりません。「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものでなければならないとされており、このチェックをクリアできた商慣習のみが「正常な商慣習」と評価されます。

 

⑵ 不公正な取引方法

・独禁法2条9項で規定されている各種行為がこれに該当します。「優越的地位の濫用」も「不公正な取引方法」の一類型ですが、よく問題となるため分けて記載しております。

・「優越的地位の濫用」以外でよく問題となるのは、①共同の取引拒絶(正当な理由なく供給・購入を拒絶する)、②不当な差別対価(地域又は相手方によって差別対価を設定して商品等の供給を継続する)、③不当廉売(いわゆるダンピング)等になります。

・これらの行為が認定され場合、同じく課徴金の対象となります。

 

この記事を書いた人
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