いわき弁護士便り

地方の弁護士事務所への就職希望は少ない?~いわきの弁護士新妻弘道の感想~

2016年3月9日

司法試験合格者が増加したにもかかわらず、地方の法律事務所への就職希望者が決して多くないことは、事務所開設3周年のときのブログで書きました。

正確な資料があるのかわかりませんが、まず間違いなく、修習生の就職地は、圧倒的に東京をはじめとする大都市圏が大半です。その要因は様々あると思いますが、自分なりに思う理由は以下のようなものでしょうか。

①大都市圏に比べ、地方では弁護士を募集している事務所自体が少ない。(同じことですが、)大都市圏の場合、50名以上の大規模事務所が多くあり、その分募集人数も格段に多くなる。

②地縁もなく知り合いもいない地方に行くことははばかられる。

③大都市圏の場合、新規分野の開拓がしやすい。また、人口や法人数が格段に多いため、ニッチ市場(隙間産業。特殊なニーズをもつ小規模市場)をターゲットにして専門性を伸ばしても食っていける。

④今後の日本の人口動向や人口集約の予測からして、大半の地方自治体は先細りであり、未来がない(ように見えてしまう)。

2015年3月時点の弁護士の分布状況は、全国で36,415名、うち16,894名(約46%)が東京三会に所属しているという状況であり、日本の人口以上に東京一極集中が顕著です。

このような状況で、東京では弁護士の競争と淘汰が急速に進んでおり、弁護士としての所得が200万円を切る人も少なからず存在しています(詳細は弁護士白書「弁護士の活動実態」をご覧ください。)。

東京などの大都市圏の場合、弁護士としての経済的成功の明暗が特にはっきり分かれるわけですが、それにもかかわらずなお大都市圏への就職が圧倒的に多いのは、逆に言えばそれだけ地方の弁護士の魅力が修習生に伝わっていない、ということなのかもしれません。

修習生を地方に呼び込むためによく言われるのは、「ワークライフバランスがとりやすい」、「自然や観光資源が多い」、「食べ物がおいしい」といった、いわゆる「田舎の良さ」という点ですが、修習生が求めているのは、もっと自分の弁護士としてのスキルが磨けるようなシビアな案件や、深い法的知識や高度な法律理論が要求され、活路を何とかこじ開けていかないといけないような困難案件なのかもしれません。

率直な感想を言わせてもらえば、このような案件は、案件自体の規模の差こそあれ、都市部でも地方でもゴロゴロあります。請求金額の0の数が1~2個(ひょっとしたらもっとかもしれませんが)違うだけで、法律理論として相当に難しい案件を扱うことは地方でもよくあります。

私でさえ、不正競争防止法だとか、医薬品医療機器等法(旧薬事法)、商標法や特許法といった専門的分野(もはや専門的分野とはいえない領域かもしれませんが)の案件を扱うことが少なからずあります。

「弁護士としてのスキルを磨きたい、自分自身が弁護士として成長したい」という欲求は、現役弁護士はもちろん、修習生なら誰もが持っているはずですので、地方の弁護士も、もっと手掛けている事件それ自体の面白さをアピールしていく必要があるかもしれません。

 

なお、詳しくはまた後日書きたいと思いますが、現在の弁護士業界はまさに斜陽産業化真っ只中の状態にあります。

司法制度改革による弁護士の増加によって、ゼロワン地域(裁判所管轄区域内の弁護士数が0名又は1名の地域)がほぼ解消されるなどの成果が上げられましたが、その一方で、同業者が増員したことの当然の帰結といいますか、弁護士の所得は一貫して減少傾向にあります。

平成26年の所得調査では、所得の平均値が907万円、所得の中央値(所得額順に並べた場合に全体の中央にくる値)は600万円となり、ついに平均値ベースでも1000万円を切ってしまいました。

これからの弁護士業界はなかなか明るい未来を想像しがたい状況にありますが、この点ももっと弁護士サイドで(なるべく客観的・中立的に)情報発信していかなければならない事柄だと思いますので、ページを改めて詳しく書きたいと思います。