いわき弁護士便り

競業避止義務(取締役の場合)~労働問題,中小企業の相談ならいわきの弁護士・磐城総合法律事務所へ~

2014年10月9日

今回は,取締役の競業避止義務(競業取引規制)についてご説明します。

中小企業一般のご相談はこちらをどうぞ。

前回は従業員の場合の競業避止義務について書きましたが,今回ご説明する取締役の競業避止義務については,会社法という法律によって詳細な規制がなされています。

取締役は,従業員に比較して,会社のノウハウ・顧客情報・その他会社の重要な内部情報に触れる機会が格段に多いといえます。そのため,それらのノウハウ・情報を不正に利用して,会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図るおそれが従業員以上に高いと言えます。

そこで,会社法という法律で詳細な規制を定め,会社の利益保護を図っているのです。

会社法が定める競業避止義務(競業取引規制)は,概ね以下のようになっております。

 

【取締役会(又は株主総会)の承認が必要】

まず,競業取引を行おうとする取締役は,事前に,取締役会(取締役会が設置されていない会社の場合は株主総会)において,行おうとする取引の重要事項を開示し,その承認を受けなければなりません(会社法356条)。

開示すべき重要事項とは,取締役会(又は株主総会)が承認してよいか否かを判断するために必要となる情報であり,具体的には,単発取引であれば,「取引の相手方,目的物,数量,価格,対象となる販売地域,流通経路,流通手段,取引期間」などになります。

 

【株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」という要件】

競業避止義務(競業取引規制)は,取締役が「自己又は第三者のために」「株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」(会社法356条1項1号)に生じます。

したがって,例えば,ある会社の取締役が別の競業会社の代表取締役に就任する場合就任するだけでは当然には「取引をしようとするとき」には該当せず,就任後に具体的取引を行う場合に競業取引規制に服することになります。

もっとも,競業会社の唯一の代表取締役に就任する場合,対外的な業務執行を行えるのは唯一の代表取締役のみになりますから,原則として「競合取引をしようとするとき」であると推定されると言われています。

地方の中小企業の場合,対外的な業務執行権限(対外的な会社代表権限)を持つ取締役が2名以上いることはあまりない(通常,代表取締役1名だけが会社代表権限を持っている)と思われますので,競業会社の唯一の代表取締役に就任する場合,競業取引規制に服し,元々の会社の取締役(又は株主総会)の承認を受けなければならないと思われます。

 

【株主による責任追及は免除されない】

取締役会(又は株主総会)の承認決議があっても,取締役の責任が一切免除されるわけではなく,競業取引を行ったことで会社に損害が生じた場合には,取締役は,任務懈怠があれば会社法423条により損害賠償責任を負担します。

取締役会(又は株主総会)の承認決議があっても,それは会社法356条が定める規制をクリアしたという意味に過ぎず,損害賠償責任の有無とは無関係とされているのです。

会社法423条の損害賠償責任は,原則,6か月前から引き続き株式を有する株主であれば単独で追及することが可能です(会社法847条)。そのため,総株主全員が取締役の責任を免除することに同意しない限り,取締役は損害賠償責任を追及されます。

 

会社法上の規制は複雑かつ多岐にわたっており,専門家によるチェックが不可欠といえますので,企業の内部問題の際にはぜひ弁護士にご相談ください。