いわき弁護士便り

いわきの弁護士「新妻弘道」が、地元いわき市の方に、法律の豆知識や役立つ情報をご紹介します。

成年年齢の改正

2018年12月2日

今回は、成年年齢の改正(18歳への引下げ)についてご説明いたします。

すでにご存じの方も多いと思いますが、今年6月に民法が改正され、成年年齢を現在の20歳から18歳に引き下げる改正法が成立しました。

詳細は法務省HPでご確認いただければと思いますが、成年年齢の引き下げにより、①本人のみで有効に契約を取り交わせる年齢は18歳に引き下げられ(民法4条関係)、逆に、②女性が婚姻できる年齢が16歳から18歳に引き上げられる(民法731条関係)ことになりました(法務省作成のPDF参照)。

ただし、改正により与える影響が広範囲に及ぶこと、若者をターゲットとした消費者被害の増大等の弊害が懸念されることから、十分な準備期間を設けるため、上記改正法が施行されるのは、平成34年(2022年)4月1日からとされました。

成年年齢を18歳に引き下げるという民法改正を行ったことに連動して、今後、その他の関係法令も順次改正されることになりますが、現時点で判明している変更点は以下のとおりです(こちらは法務省作成のQ&A参照)。

 

1.18歳から親の同意なく一人で有効に契約を結ぶことが可能となる【変更あり】。

子が親の親権に服するのは18歳までとなり、18歳になってからは一人で自由に契約を結べるようになります。しかし、前述のとおり若者をターゲットとした消費者被害の増大が懸念されることから、親御さんの意見を聞くなど慎重に判断することが大切です。

法対応としては、消費者契約法を改正して契約の取消しや無効を主張できる範囲を広げる等の対応をするほか、若者に対する法教育をさらに拡大していくことが予定されています。

 

2.養育費の支払期限は当然に18歳になるわけではない【変更なし】。

今後、解釈の争いが出てくると思いますが、養育費の支払期限については、成年年齢が18歳に引き下げられたからといって、当然に支払期限も18歳までになる、というわけではないと思われます。

養育費の支払期限について当事者間で合意ができない場合、裁判所の判断によって周期が決められることになり、現状の実務では、特段の事情がない限り20歳まで認められる場合が多いのですが、この実務が改正後も変わる可能性は少ないと思われます。

養育費は、未成熟の子の養育・生活の費用として支払われるものであり、18歳で成年になったとしても,依然として未成熟(≒経済的自由が期待できない状態)と認められる限りは、養育費の支払義務は免れないのではないかと思われます。

 

3.お酒・タバコは引き続き20歳から【変更なし】。

健康への悪影響防止が目的ですので、単に成人に分類される年齢が引き下げられただけで健康への悪影響の発生リスクは何ら変わりませんので、当然ですね。

 

4.女性が結婚できるのは18歳から【変更あり】。

現在の民法では、女性の婚姻適齢(結婚できる年齢)は16歳とされていますが、男女間で差を設ける合理的理由はないということで、男性と同じく18歳から結婚できるように年齢が引き上げられました。

 

5.養子を取れるようになるのは引き続き20歳から【変更なし】。

 

6.競馬、競艇、競輪の券が買えるのも20歳から【変更なし】。

相続法改正の概要

2018年11月29日

だいぶ久しぶりのブログ更新となりました。いわき市の皆様に、今回は相続法の改正についてご説明させていただきます。

2020年4月から施行される民法改正(債権法改正)に色々と注目が集まっていますが,実は相続法も最近改正されまして,2019年7月から新たな相続法のルールが順次施行されます。

なお,相続法という法律はなく,民法の中の相続に関する条文の改正になります。

今回の相続法改正の詳細は,法務省のHPをご確認いただければと思います。また,相続法改正の概要は,法務省作成のPDFをご確認ください。

こちらの相続法改正もなかなか大きな改正になっており,主要な改正点を挙げると以下のとおりになります。

 

1.「配偶者の居住権」の新設(新民法1028条~1041条)

相続開始時に配偶者が被相続人名義の建物(遺産に属する建物)に居住していた場合,一定の期間で配偶者の居住権を認める制度が新たに設けられました。

遺産分割等が終了するまでの間の居住を認める「配偶者短期居住権」(新民法1028条~1036条)と,②遺産分割等の終了後に終身又は一定期間の居住を認める「配偶者居住権」(新民法1037条~1041条)の2種類が新設されました。

 

2.「遺産分割前の払戻」制度の新設(新民法909条の2等)

預貯金口座につき,遺産分割未了の場合であっても,生活費,葬儀費用,相続債務の弁済等の事情に対応できるよう,一定の要件の下で払戻しができるようになりました。

金額の上限はあるものの,家庭裁判所の判断や他の相続人の同意がなくとも,相続人1名の単独での払戻しも可能となりました。

 

3.遺留分制度の大幅な見直し(新民法1042条~1049条)

遺留分減殺請求権を,遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権に構成し直す等(※),法的性質から抜本的に見直しが行われました。一般市民の感覚に近い金銭請求権に見直されたと言ってよいと思います。

(※)以前は物権的効力説という考え方が採用されており,例えば,「遺贈された不動産が10件あり,遺留分4分の1の相続人が遺留分減殺請求権を行使した場合,10件の不動産全てにつき4分の1ずつ共有持分権を取得する。」という解釈でした。そのため訴訟をすると,「10件の不動産につきそれぞれ4分の1の共有持分の移転登記をせよ。」という請求内容で組み立てないといけませんでした。

 

4.「特別の寄与」制度の新設(新民法1050条等)

相続人以外の親族(相続権のない親族)無償で被相続人の療養看護や介護を行った場合,その親族の貢献を保護するため,「特別の寄与」制度が新たに設けられました。

一定の要件の下で,療養看護等を行った親族が,法定相続人に対し,寄与に応じた額の金銭を請求することが可能となりました。

 

これまた,私が司法試験を受験した当時の法制度とはだいぶ内容が変更されております。いわき市の皆様に良質なリーガル・サービスを提供できるよう,改正相続法についても入念に勉強したいと思います。

相続放棄・限定承認について~いわき市の法律相談なら磐城総合法律事務所・弁護士新妻弘道へ~

2018年7月24日

 久しぶりのブログ更新となりました。決してサボっていたわけではなく,業務が立て込んでしまったためなかなか更新できませんでした。おかげさまで,顧問先様やお知り合いの方,以前のクライアント様からご紹介いただく案件もだいぶ増えてきました。

 さて,今回は,意外に勘違いが多い相続放棄,それと,あまりなじみがないと思いますが相続の限定承認という2つの制度について書きたいと思います。

 例えば,父親が亡くなったが,父親には多額の借金があり,そのまま相続してしまうと多額の負債を抱えてしまうという場合に,これら2つの制度を使うことを検討することになります。

 この場合,まずは父親の遺産として何があるのかを細かく正確に調査することが必要です。「どんな遺産がどのくらいあるのか?」「相続人は誰か?」という2点は,相続問題を処理する上で明らかにすべき必須事項ですので,しっかり調査してください。これが分からないと弁護士も具体的なアドバイスのしようがありません。

 遺産調査をした結果,判明した父親のプラスの遺産(積極遺産)の中に,自分が相続したいものがあるか否かによって,皆さんが取るべき対応は変わってきます。

 

① 相続したい積極遺産がない場合

 この場合は,父親のマイナスの遺産(消極遺産)を相続しないようにするため,相続放棄という手続を取ります。父親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して相続放棄の申出をしてください。家庭裁判所に申出をしないと相続放棄はできませんのでご注意ください!

 この相続放棄ができる期間には民法上の制限があり,原則,自分のために相続開始があったことを知った時(①被相続人の死亡を知り,かつ,②それによって自分が相続人となったことを知った時)から3か月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。なお,家庭裁判所に申し立てて期間を延長してもらうことも可能です。

 期間内に相続放棄しない場合,ごく例外的な場合(相当な理由により遺産が全くないと信じた場合等)を除き,相続を承認したとみなされ,消極財産も含めて全ての遺産を相続してしまいますので,必ず期間を厳守するよう注意してください。

 

② 相続したい積極遺産がある場合

 例えば,父の所有していた実家の土地建物だけは何としても相続したいという場合が典型例として考えられます。この場合には,限定承認という手続を取る必要があります。限定承認とは,簡単に言うと,「消極遺産も含めて全ての遺産を相続する。ただし,相続した債務の返済の点に関しては,相続した積極遺産の範囲内でのみ行えば足りる。」とする制度です。相続した積極遺産の額を限度として相続債務を返済すれば足り,残債務について自分の固有財産から返済する必要はありません。

 この限定承認手続の中で,①競売によって相続したい遺産を競り落とすという方法,または,②家庭裁判所が選任した鑑定人に遺産を鑑定してもらい,その鑑定額で買い取る方法のいずれかの方法を取ることによって,相続したい積極財産を取得することができます。

 ただし,限定承認手続は,官報に公告を出したり相続債権者を調査したりしなければならず,手続が非常に複雑です。また,時間も費用も相当かかります。さらに,そもそも民法の条文自体が非常に少なく,「該当する条文がなく,どう手続を進めていけばいいか分からない」という局面が多く生じます。そのため,限定承認手続を利用する場合には,必ず弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士業界の現状と今後(2017年2月)~いわきの弁護士新妻弘道のブログ~

2017年2月19日

2016年3月に、弁護士業界の現状と今後(2016年3月)というテーマで自分なりの意見を書きましたが、それから約1年が経ちました。

改めて、現時点での弁護士業界の現状について、自分なりの感想を書きたいと思います。やはり取り留めのない長文になってしまいましたが、地方の現役弁護士のリアルな実感だと思ってお読みいただければ。

【弁護士業界の現状。2017年2月】

斜陽産業化、少なくとも経済的側面という一側面から見た場合の弁護士業界の魅力低下は、もう疑いの余地のない事実(評価)だと思います。

前回のブログ以降、弁護士の所得について正確な統計が出ているわけではありませんが、弁護士一名あたりの収入という面から見た場合に一貫して減少傾向にあることはほぼ間違いないと思います。市場規模が変化なし(というか縮小気味)なのに弁護士の頭数が増加しているわけですから当然でしょう。

悲惨なのはその影響で、司法試験を目指す学生等が大幅に減少していると思われる事態になっています。

法科大学院の志願者は、私が法科大学院に入学した2006年の約4万人から、2016年は約8200人まで減少しました。この数値を知ったときは正直言ってだいぶ引きました。「志願者数5分の1!?司法試験を目指す人がそこまで減っちゃっているのか・・・優秀な人財が司法試験を人生の選択肢として選ばなくなってきているのか・・・」と。

もちろん、司法試験を受けたらトップレベルで合格できそうな超優秀層は、少なからず予備試験を合格し、法科大学院に入学することなく司法試験を受けることができますが、その分を割り引いて考えても、「司法試験離れ(法学部離れ?)」は顕著であるように感じます。

司法修習修了者の進路別推移を見ても、合格者の減少率以上に、弁護士を進路として選択する人の比率は下がっているようです。自治体の任期付き職員や企業の法務部に入社する等、「その他」の進路がこれまで以上に多く見出されていることも当然影響しているのでしょうが、弁護士という職業への魅力が以前より減っていることも一因なのではないかと思います。

これまで各種メディアは、「もっと潜在的需要があるはずだ」、「もっと弁護士の魅力を発信せよ」という、正直言って抽象的極まりない、聞き飽きた感じのある論調の記事を発信してきましたが、そんな潜在的需要は、少なくとも現時点では存在しないのだと思います。

正確に言えば、「弁護士の経済的魅力を維持できるだけの、経済的リターンが期待できる潜在的需要はない」ということだと思います。経済的リターンを考慮しない(無償又は低額リターンの)潜在的需要であれば、そんなものは勿論あるでしょう。「タダで車がほしい」、「タダでラーメン食べたい」という需要であればいくらでもありますが、それを「需要」だという人はいないはずです。

もちろん、弁護士が手を差し伸べるべき、経済的リターンがおよそ期待できない潜在的需要(救済すべき経済的弱者や法的問題)は存在しますし、弁護士の使命としてそういった問題に取り組むべきことは勿論です。金儲けばかり考えて弁護士としての使命、美学又は矜持を持たない弁護士は、同業者から最も忌み嫌われ軽蔑される存在と言ってよいでしょう。

ただ、そのような公益的活動を十分に行う上で最も大事なことの1つが、皮肉にも「経済的基盤の盤石性」であることもまた事実であると言わざるを得ません。顧問料でも報酬でも何でも構いませんが、無償活動に時間を割いても事務所経営が揺らがないだけの経済収入がなければ、公益的活動に十分に力を割くことはできないのが現実です。

弁護士や医師等の専門職種は、基本的に「自分の時間を売る商売」であり、自身が持つ専門的知識や専門的スキルを用いて、自分が実際に働いた時間に対して経済的対価を受け取る職業です。家賃収入のような不労所得(権利収入)は基本的になく、せいぜい顧問料がそれに近い収入形態として存在するにすぎません(その顧問料ですら、全くの不労所得かと言えば全然そんなことはありません。)。

そのような収入モデルとなっている職業にもかかわらず、事件の減少や弁護士費用の低額化の流れ等の影響で、弁護士の経済的基盤は大きく揺らいでいます。

経済的基盤の確立のために個々の弁護士ができることは、前回ブログで書いたとおり、①ニッチトップを目指して自分のブランドを確立する(自分が活動する経済コミュニティの中で、「この分野の弁護士ならコイツだ!」という絶対的地位を獲得する)、②自分の顔や名前をできる限り売っておいて「誰か弁護士を!」となったときに自分がファーストチョイスに来るようにしておく(事件を獲得できる確率を上げておく)、といったことくらいしか思いつきませんが、それらと並んで今後大事なことは、やはり消費者側(依頼者側)に、弁護士という職業や弁護士業務に関する正確な情報発信をしておくことではないかと思います。前回ブログから約1年が経ちますが、その思いは一層強くなっています。

【弁護士という職業・弁護士業務の特殊性】

上に書いたとおり、弁護士は「働いた時間に対して経済的対価を受け取る職業」です。

しかも、弁護士が取り扱う事件は、大枠としては「相続」だとか「債権回収」だとかに分類できるものの、基本的に1つ1つの事件が全く別物であり、弁護士の事件処理も基本的にフルオーダーメイドとならざるを得ません。そのため、事件処理を類型化・定型化して安価で大量処理する(バンバンさばいていく)等ということは基本的にできません。ほぼ全ての事件類型において、それをやったら十中八九、弁護過誤を犯すと思います。

したがって、一見単純だと思える事件であっても、弁護士は、最低限、①相談者からの事実関係の聞き取り、②聞き取った段階での大枠の事件処理の方針・方向性の調査及び絞り込み、③聞き取った事実関係を裏付ける証拠・資料の収集、④収集した証拠の内容確認、⑤証拠がどの程度の証明力を持つかの評価(特に、訴訟になった場合に立証できるかどうか)、⑥これらの作業を経ての最終的な事件処理の方針の決定、⑦相手方との交渉、訴訟準備等の実際の事件処理(当然1つ1つの事件で中身が異なります)、という作業をしなければなりません。

フルオーダーメイドであるがゆえに、本来ならば時間がかかりますし、時間がかかれば当然それ相応の費用を頂かなければなりません、本来ならば。

しかし、昨今の弁護士増員の影響で、弁護士業務の特殊性に対する理解が不十分なままに費用の低額化ばかりが進んでしまい(意識されてしまい)、消費者側も一定程度は費用が低額となることを、ある意味当然のことのように期待するようになってしまった印象があります。

そのような流れ・傾向は、結局は、「弁護士費用の単価を安くする」→「事務所経営を維持するためには多くの案件を受任せざるを得なくなる」→「事件1件あたりに割ける処理時間が減る」→「本来フルオーダーメイドにもかかわらず、回転数を上げるため、型にはめた事件処理・中途半端な事件処理をするようになる」という事態を招き、消費者側(依頼者側)にとっても供給者側(弁護士側)にとってもメリットのない、不幸な結論を導くだけではないかと危惧しています。

「オーダーメイドのスーツが既製品のスーツより高い」というごく当たり前のことが、弁護士業務においては消費者側に十分認識されていないのではないかと思いますし、そのような事態を招いた責任が誰にあるかといえば、それは間違いなく弁護士側にあるのだと思います。

大多数の一般人にとって、弁護士は「敷居が高く」「別の世界の人」であり、「知り合いや親戚にも1人もいない」でしょうから、消費者側に弁護士の実像を把握するよう求めるのは不可能でしょう。供給者である弁護士側において、「高いと思われる弁護士費用は実はそれほど高くないことが多いこと」、「その理由が原則フルオーダーメイドという弁護士業務の特殊性にあること」ということを、批判を恐れずに発信していかなければならないと思います。

そういった情報発信をして弁護士の実像・弁護士業務の特殊性を正確に理解して貰った上で、それでもなお消費者側(社会の側・世論の側)が、「そうであったとしても費用の低額化を指向してくれ!」と決断するのであれば、そのときは我々弁護士側が、費用体系であったり業務体系であったり事務所規模だったりを見直さなければならないと思います。しかし、現時点では、消費者側(社会の側・世論の側)が、その判断を適切に下せるだけの前提知識・前提理解をそもそも有していないように思えてなりません。

 

「社会正義の実現と基本的人権の擁護」という弁護士の不変の使命を十二分に果たせるようにするためにも、このような類の情報発信を増やしていく必要があると思います。

間違いなく、「言い訳だ」、「事業者としての努力が不足しているだけだ」という批判が出るでしょうが、そのような批判を契機として、弁護士の仕事の実態を知ってもらう機会もできるでしょうし、さらに進んで「こんな風に業務を効率化すればもっと低額化できるし問題解決できるだろう、フルオーダーメイドも達成できるだろう!」という建設的な意見も出てるくかもしれません。むしろそんな建設的な意見を拝聴したいくらいです。

本当に取り留めがない駄文でした(笑)。最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

小中時代を思い出す「村田進学塾」~いわきの弁護士新妻弘道のブログ~

2017年2月17日

いわき駅周辺に、「村田進学塾」という塾があります。

実はこの塾、私が小学生5、6年生くらいから中学卒業時まで通っていた塾になります。

当時は北白土の辺りにひっそり(失礼な表現ですいません)とあった塾で、勉強への意欲があまりなかった入塾当初の私は、塾長や塾長夫人にバシバシ鍛えられていました。夏の勉強合宿と,塾長夫人の口癖は今も記憶に焼き付いています。

おかげ様で,「解けない問題が解ける達成感」,「分からないことが分かる快感」を知ることができ,勉強が苦でなくなりました。特に数学が最も好きでかつ最も得意科目になったことは,現在の弁護士という仕事をする上で非常に助かっています。

法律は「文章で行う数学」みたいなもので,数学的な論理的思考ができる人にとっては実はあまり難しい学問ではありません。しかも,「文章で行う数学」と言っても,数学レベルで言ったらせいぜい二次方程式とか二次関数くらいのレベルです。

法的問題の解法やパターン,あるいは法律の建付けやパターンというのは実はごく少なくて(感覚的ですが,20~30くらいのパターンにどの論点や法律も当てはめられるようなイメージ),ただ,司法試験合格レベルに持っていく上で頭に植え付けるべき情報が非常に多い,という感じです。

なので,理系から文系に移ってきて比較的すんなり司法試験に合格する方は結構おります。お医者さんとか,工業系畑出身の人とかですね。数学的な論理的思考が反射のようにできる人で,記憶力も自信あり,という人たちですかね。

逆に文系の人が医者になるというケースはあまり聞かないので,やはり法的な思考は理系の人のほうが馴染みやすいのだと思います。

ごく個人的な偏見ですが,数学が得意になると,論理的思考ができるようになるし,雑多な情報の中から必要な情報を取捨選択してシンプルな思考でゴールに向かって一直線に解き進める力も養われるので,将来仕事をする上でとても役立つと思います。仕事の生産性や様々な行動の効率性も上がるんじゃないかと思いますので,子どもができましたら,とりあえず数学を好きになってもらうように仕向けようと思っています。

私の勉強の基礎を作ってくれた「村田進学塾」,小中学校時代の思い出が蘇る貴重な場所です。

なお,ステマみたいな投稿ですが,断じて違います(笑)

弁護士のミッション(使命)という道標~玉成会の司法試験合格者祝賀会にて考えさせられました~

2016年11月25日

 今回は珍しく取り留めのない話です。けっこう考えさせられることがありましたので、自分への戒めという意味も込めてダラダラと書き綴ります。

 少し前の話ですが、先週の金曜日(11月18日)に、大学時代に所属していた研究団体(中央大学玉成会)の新司法試験合格者祝賀会が東京で開かれましたので、私もOBとして参加してきました。

 玉成会というのは、中央大学に古くからある司法試験受験団体でして、私は大学2年生から入室して司法試験の受験指導等をしてもらいました。大学時代の辛く苦しい思い出の大半を提供してくれる、思い出深い団体です(笑)。全国津々浦々にOB・OGがおり、福島県弁護士会にも数名のOB・OGがいらっしゃいます。ちなみに、私が前に務めていた事務所の所長も玉成会出身です。

 私は下っ端も下っ端ですので、当日は端のほうにちょこんと座り、リクルートの意味も兼ねて合格者と軽く名刺交換でもしようかなと気楽に考えていたのですが、思いがけず、若手の先輩として合格者に対して祝辞・激励の挨拶を申し上げる機会をいただきました。

 突然のフリに動揺してしまい、大した挨拶もできなかったのですが、後輩達に伝えたいことを絞り出したところ、①弁護士としてのミッション(使命)を見つけることが大事であること、②一見すると弁護士が関与できそうにない案件も含めて、広い範囲の案件に門戸を広げておいてほしい、という2点が思い浮かんだので、それらを(だいぶたどたどしく)申し上げました。

 挨拶が終わった次の日くらいに、ふと「自分はなぜあんな話をしたのかな?」と考えてみたところ、多分こんな意識↓ があったのではないかと思います。

 インターネットを検索すればその手の記事が溢れていますが、現在の弁護士業界は、全体的には相当な苦境に立たされております。司法試験合格者を急増させたものの需要がそれに追いついておらず(というか人口減少社会なので国内紛争(内需)は全体として減少していく)、弁護士の経済状況は以前のイメージよりだいぶ低下しています。たまにニュースに流れる「後見人弁護士が管理している財産を横領した。」なんて事件は、その一端を示すものです。

 そのような苦境の中で、弁護士として、(ごく当然ですが)不正に手を染めず、プロフェッショナルとして気高く生きていくためには、自身の決断の拠り所にすることができる「ミッション(使命)」、あるいは臭い言葉ですが「美学」というものが必要になります。独立した弁護士はもちろんイソ弁(勤務弁護士)であっても、弁護士業務を遂行していく上で常に決断を求められます。自分で考え結論を出す際、迷いに迷ったときに決断の最後の拠り所にするのは、自分の経験上、弁護士としての「ミッション(使命)」だとか、「美学」だとか、「ポリシー」といった、自身の人生観や理想とする弁護士像に起因する視点になります。

 そういったものをぜひ早く見つけてほしいと無意識的に思い、①の話をしたのだと思います。この点は、自分自身が事務所を経営する弁護士になり、色々と悩ましい決断を1日に何回もしなければならなくなったからこそ、より強く意識するようになったのかもしれません。

 ②の点も、自分の経験から思うようになったことです。司法試験や司法修習で身に付けられるのは、法律実務家としての最低限の知識・論理的思考力・お作法に過ぎず、実際の社会では、大海原に生息する海洋生物のごとく、本当に多種多様な案件が存在します。一見すると弁護士がおよそ関与する余地がないような案件でも、よくよく考えてみると、「弁護士が入ったほうが円滑かつ健全に処理できる案件ではないか?まさにニッチな潜在的需要がある分野ではないか?」と思うような案件が実は少なからずあるのだなと感じることがあります。

 弁護士としてのキャリアを積んでしまえばしまうほど、どうしても、「過去に処理した案件の型にはまるかどうか」、「過去にやったことのある案件かどうか」といった制限を無意識的にかけてしまい、経験したことのない新種案件を嫌がったり避けたりする傾向が出てきてしまいます(弁護士7年目の私ですら、忙しくなってくるとその傾向が出てきてしまいます。)。

 そういった傾向は、実は、「職域がほぼ無制限といってよい弁護士業務の醍醐味」を半減させているのではないか、と最近強く思うようになってきました。

 弁護士として、それこそ、顧問先企業と海外企業との国際取引の処理や死刑求刑事件の刑事弁護といった超シビアな案件から、近所の知り合いのおじいちゃんおばあちゃんの近隣トラブルといった(下手すると牧歌的な)小規模案件まで広く関与しうるのに、活躍できる可能性のあるフィールドを自分の価値観で狭めてしまうのはもったいない、と思うようになってきました。そういった意識がどこかにあって、②の話をしたのだと思います。

 これから弁護士になる司法試験合格者は、ますます厳しくなる業界状況の中でキャリアをスタートさせることになりますが、ぜひ、以上の点を意識して、楽しく弁護士として活躍していってもらいたいですね。

 色々ネガティブなことも書きましたが、基本的に弁護士の仕事は、いつまで経っても退屈しない楽しい仕事ですので、自分も以上の点を忘れず、楽しく弁護士の仕事を続けていきたいと思います。

 だいぶ手を付けるのが遅いですが,現在は,中小企業の海外進出に関しての基本知識を勉強中です。「内需が頭打ちなら外需に頼る」というシンプルな発想ですが、これからは英語も少しはできないといけませんので、活躍できるフィールドを広げるため頑張っていきたいと思います。

中学生の体験学習の機会をいただきました~磐城総合法律事務所・いわきの弁護士新妻弘道~

2016年9月15日

いわき市内の中学校からご依頼を受け,先日,事務所に中学生を招いて体験学習をしてもらいました。

午前中3時間だけの短い体験学習でしたが,事務所内の見学のほか,裁判(刑事裁判)の傍聴もしてもらいました。

弁護士としての守秘義務がある関係上,具体的な事件処理を体験させるわけも行かず(中学生を法律相談や打合せに同席させるのはまずいですし),苦肉の策として,過去の事件記録にマスキングをして簡単に説明しました。

弁護士の使命(基本的人権の擁護と社会正義の実現)という大上段の話から始まり,弁護士(法律家全般)の思考過程なんかも説明し,弁護士が実際に仕事としてやっていることを分かりやすく説明した,,,つもりでいます,,,が,多分あまり伝わっていないと思います(苦笑)

中学生で弁護士の仕事のイメージをつかむというのも大変だと思いますので,実際にやっていることは,弁護士ドラマとは似ているようで全然違うということだけでも分かってもらえれば十分な成果だと思います(^-^;

なお,その子は,竹野内豊のドラマ「グッドパートナー」を見て弁護士に興味を持ったということですので,ぜひ司法試験をパスしてもらい,将来,バリバリの企業法務弁護士としていわき市に凱旋していただき,当事務所に就職してほしいですね(笑)

人工知能(AI)と弁護士についての雑感~いわきの弁護士新妻弘道のブログ~

2016年7月13日

◎人工知能(AI)が弁護士に取って代わる?

最近,ちらほらと人工知能(AI)の話題が上っていますね。AIがクイズ番組でクイズ王に勝利したり,囲碁でプロ棋士に勝利したり,日進月歩で技術が進化しているようです。「今のうちにAI関連の企業の株を買っておいたら面白いのかな~。」などと,株式投資など一切やらないくせに思ったりしています。

そんな,弁護士業務とはあまり関わりのないように見える人工知能(AI)ですが,実は大いに関係がありまして,何と一説では,弁護士業務はいずれ人工知能(AI)に取って代わられるという話まで出ています。

実際,すでにアメリカの大手法律事務所では,人口知能(AI)を導入し,AI弁護士に破産法案件を担当させているとのことです。アメリカではもうそこまでAIの波が押し寄せているのかと正直驚きましたが,人工知能(AI)が質問の意味を認識・理解できるようになり,また質問を受けるほど自己学習して賢くなっていくようになっていることからすると,破産法のような分野で人工知能(AI)が人間に取って代わるということも,案外驚くべきことでもないのかもしれません。

「人工知能(AI)が弁護士業務を代替できるのか?」というテーマは,結局のところ,「弁護士(=法律家)が事件処理のために行っている思考過程を人工知能(AI)が代替処理することができるのか?」という問題に帰着すると思いますが,これに対しては色々と意見があるようです。

これに対しては,個人的には,当面(10年くらい?)は弁護士業務が取って代わられることはない,ただし,いずれは(たぶん自分が現役バリバリでやっているうちに),相当範囲の業務において,少なくとも人工知能(AI)との協働を余儀なくされるようになっているのではないか,と感じています。

 

◎弁護士の思考過程とは?

事件処理の際に弁護士(=法律家)が行う思考過程は,ごくごく大雑把に言うと,

生の事実経過を把握する。

②把握した生の事実経過を基に,事件解決のために適用されるであろう法律,裁判例で示された規範又は法律構成を選出する(ケースによっては,裁判例を敷衍したり参考にしたりして,自ら規範を定立する場合もあります)。

③適用されるであろうと考えた法律,規範又は法律構成を前提に,生の事実の中から,その判断のために重要な事実(有利に働く事実と不利に働く事実)をピックアップする。

④ピックアップした重要な事実を法律,規範又は法律構成に当てはめ,争点に対する結論を出す

⑤争点に対する結論を出した上で,最終的な法的効果(損害賠償請求ができるのか否か,契約が有効になるのか否か等)を導き出して事件を解決する,又は事件の解決策を提示する。

という作業になります。

 

◎人工知能(AI)が弁護士の思考過程を代替できるのか?

このうち,①や③の作業は,人工知能(AI)が代替することも不可能ではないかなと感じます。最も困難と思われるのは②と④の作業でして,個人的には,ここが弁護士としてのセンスというか力量の見せ所と考えています。

弁護士は,一見不利に思える案件であっても,紛争解決のため(=依頼者の望む結論を導き出すため),適用される法律,裁判例,あるいは法律構成を苦心して選出し(②),事実の当てはめにおいても,行動の経緯や動機までも考慮して,不利あるいは不自然に思える事実でも実はそれほど不自然ではない等と苦心して主張していく作業(④)を行っています。

このような作業は,人工知能(AI)に対し,単純に過去の事件類型や裁判例,それに対して適用された法律及び当てはめの実例等をインプットさせたり学習させたりしたからといって,逐一的確になしうるものではないように感じます。

事実経過の背後にある人間の行動原理・行動の動機・感情といった不確定的な要素(≒人間が必ずしも合理的な行動を取るわけではないこと)まで人工知能(AI)に学習させ理解させなければ,なかなか難しいのではないかなと感じます。

(※なお,事件解決のために参照すべき文献や裁判例の調査といった比較的単純な作業(事務職員やパラリーガル等のサポート係が行っている業務)については,現状の人工知能(AI)でももはや代替可能と思われます。)。

逆に,そのような不確定的な要素が介入しづらい分野(過払案件,交通事故,経済法分野,特許分野とか。あるいは会社法案件や企業間取引トラブルなど関係者が経済的に合理的な行動を取ることが一般的な案件)であれば,人工知能(AI)によって上記思考過程を代替することも不可能ではないように感じます

そうすると,むしろ大手法律事務所(ローファーム)が取り扱っているタイプの案件のほうが人工知能(AI)と親和性があり,反対に,地方都市のいわゆる町弁が取り扱っているような,離婚,相続など一見不合理とも思える行動が少なからず取られるタイプの案件には人工知能(AI)による処理に馴染まないのではないでしょうか。

ただ,科学技術の発展は本当に恐ろしいものがあり,いずれは,「人間の行動原理・動機・感情」といった部分でさえも,人工知能(AI)が膨大なパターンを作り出し,かつ自ら学習し,人工知能(AI)が人間の行動原理・動機・感情といった不確定要素・非合理的要素の部分でさえも完璧に理解してしまうという瞬間が来るかもしれません。

そのようなときには,人工知能(AI)が広く弁護士業務を代替する時代がやってくるのではないかと思います。

相談室の机には人工知能(AI)の顔が映るディスプレイとマイクがあり,相談中に人間弁士と人工知能(AI)弁護士が協議し,「私の方針について,人工知能(AI)も『問題ない』と回答してますので,その方針で行きましょう。」と説明する時代が来るかもしれません。また,企業の法務部担当者から,「弊社のAIに方針を確認したところこういった回答を受けましたので,この方針で処理をお願いします。」と依頼される時代が来るかもしれません。

◎人工知能(AI)を軽視すべきではない?

そのような時代が来た場合に我々人間弁護士の職域はどうなってしまうのかと不安になります。そのような時代においてもなお弁護士(専門職)としての価値を提供しようとなると,法的処理能力は完全に人工知能(AI)が人間を凌駕しているわけですから,「低価格」とか,「スピーディーさ」とか,「低姿勢であること」等の面で付加価値を生じさせるしかないように思います。

もちろん,人工知能(AI)が上記レベルにまで発達したとしても,しばらくは人間弁護士の職域は守られるとは思います。依頼者の話に対する「共感」であったり「相づち」であったりという人間ならではの反応を人工知能(AI)が行うようになるまでにはまだまだ時間がかかると思いますので,人間弁護士と人工知能(AI)弁護士が協働して事件処理に当たるという時代がしばらく続くと思います。

しかし,さらにさらに進化が進み,「共感すること」や「相槌を打つこと」まで人工知能(AI)が理解しきったときには,「人間弁護士は人工知能(AI)が決めた方針に従い,書面を作成したり裁判所や交渉の場に出頭したりするだけの事務処理を行う存在」となってしまう可能性も,あながち妄想とも言い切れないように思います。

弁護士と人工知能(AI)との「協働」関係の時代がいつ来るのか?「協働」関係がずっと続いていくのか?それとも人工知能(AI)が人間弁護士を凌駕してしまう時代が来るのか?

私が弁護士になった7年前にはおよそ考えられなかった疑問が出てくるようになったという事実のみをもってしても,「人工知能(AI)恐るべし。それを作ろうとしている人類はもっとお恐るべし。」という印象であり,決して一笑に付して軽視すべき問題ではないように思います。

中小企業の事業承継~企業法務なら磐城の弁護士新妻弘道・磐城総合法律事務所へ~

2016年6月1日

事務所報Vol.5のコラムで紹介させていただいた「中小企業の事業承継」については,今後も大きな問題として多くの需要が維持されていくだろうと思われます。

そこで,中小企業の事業承継の大まかなイメージ・ポイントをつかんでいただくため,上記コラムの内容を本ブログでもご紹介(引用)させていただきます。

全体的な注意点の頭出しという内容になっておりますが,いわき市内の中小企業の皆様(特に後継者不在や承継方法に悩んでいらっしゃる経営者の皆様)は,ぜひ熟読していただければ幸いです。

なお,中小企業一般の法律相談についてはこちらをご覧ください。

(↓ 以下,引用部分)

以前から中小企業の重要なテーマと認識されており,しかしながら一向に解決していないと思われる事業承継について,基本的ポイントをご紹介します。最低限の知識を確認していただければ幸いです。

1 「何を」,「誰に」,承継させるのか?の検討

⑴ 事業承継と言われたとき,多くの方は何をどうするのかイメージが掴めないと思います。事業承継の目標は,会社の経営権」,「議決権」,「財産を後継者に円滑に引き継がせることにあり,最も基本的には,代表取締役の地位」,「会社の株式」,「事業用資産を後継者に承継させることになります。

⑵ 承継させる相手としては,中小企業の場合,基本的に親族になり,ごく例外的に第三者(親族外の役員,従業員等)になると思われます。

2 「いつ」,「どうやって」,「いくら」で承継させるのか?の検討(税金負担への配慮が必要)

⑴ 会社の株式を承継させるに当たっては,最も簡便な方法は株式譲渡になります。地方の中小企業の場合,大半が株式に譲渡制限(株主総会又は取締役会の承認がないと株式を譲渡できないという制限)をかけていると思いますが,取締役も親族で構成されていることが大半ですので,譲渡の承認は比較的簡単に取れると思います。ただし,株式評価額が高い場合,多額の株式取得資金が必要となり,仮に贈与すれば多額の贈与税が課税されますので,いずれにしても株式評価を下げるための対策(後述)が必須となります。

 その他の手段としては,遺言による株式取得者の指定自己株式の取得(会社が現オーナーの株式や後継者以外の株式を取得し,後継者の議決権比率を高める方法)等がありますが,遺言については遺留分侵害(後述)に注意しなければならず,自己株式の取得については会社法上の規制をクリアしなければならないという問題があり,注意が必要です。

⑵ 事業用資産を承継させるに当たっては,主たる事業用資産を会社が所有していれば,そのまま会社所有として問題ないでしょう。敷地や事務所建物が個人(オーナー)所有で賃貸借契約を結んでいる場合等は,相続手続において後継者の単独所有にしてやる必要があるでしょう。相続税の負担を考慮し,会社に現預金があるようであれば,相続開始前に会社が事業用資産を買い取ることも検討すべきです。

3 どのようにして株式評価を引き下げるかを検討する

 ここが中小企業の事業承継を考える上でメインテーマになると思われます。中小企業の大半は非上場であり,非上場の株式の評価方法は,類似業種比準方式純資産価格方式の2種類があります。いずれにせよ,業績が好調で資産が潤沢な会社ほど株価も高く評価されますので,業績が良くない時期又は資産状況が悪化した時期に株式を承継させるよう計画を立てておく必要があります。

 典型的な方法としては,役員退職金を支給したり高収益部門を分社化したりして利益が引き下がる時期を発生させる方法や,不動産を取得したり借入債務を負担したりして資産状況が悪化する時期を発生させる方法があります。

4 遺留分侵害への配慮

 特に相続によって株式を取得する場合に問題となりますが,民法上の遺留分侵害に注意する必要があります。遺留分とは「遺産として留保すべき分」という意味と考えてもらうと分かりやすく,遺産を特定の後継者に承継させた場合,他の相続人が,「遺産の一定割合分を自分によこせ」と主張できる権利です。

 株式以外の遺産が多くあれば,株式以外の遺産を他の相続人に渡すことで解決できるでしょうが,遺産全体に占める株式の割合が高い場合には,遺留分に対する配慮が必要となります。

 具体的な対策としては,経営承継円滑化という特例法に定める除外合意や固定合意という手段を使って遺留分侵害が生じないようにする方法があります。

5 複数の専門家を関与させる

 事業承継は,「後継者の発見」など法律家だけでは解決できない問題もあり,弁護士,税理士,社労士,司法書士,銀行,経営コンサルタントなど諸業者が協力して解決していく必要がある分野です。

 地方の場合,顧問税理士の先生,銀行あるいは経営コンサルタントに相談することが多いのではないかと思いますが,それぞれの業種ごとに得手不得手がありますので,複数の専門家を関与させ,全員でベストの解決策を目指していく必要があります。ぜひ弁護士のご利用もご検討ください。

相続でよく起きる問題(生前の預金の引き出し・使途不明金)~相続の相談ならいわきの弁護士新妻弘道・磐城総合法律事務所へ~

2016年4月14日

久しぶりの相続関係のお話です。

相続の基本についてはこちらをご覧ください。また,相続の基礎知識に関するブログこちらをご覧ください。

 

相続関係のご相談でよくお聞きするのが,「被相続人の面倒を看ていた相続人の1名が,被相続人の生前,被相続人の預金をたくさん引き出していたことが判明した。どうしたらよいか?」というものです。

引き出しの理由や経緯によって,対処方法や法的な解決の仕方が様々ありますので,場合を分けて考えてみましょう。

 

① 被相続人に無断で(被相続人の承諾なく)預金を引き出していた場合

めったに起こらない最も悪質なケースといえますが,この場合には,無断引き出しをした相続人を被告として,不当利得返還請求訴訟(又は不法行為に基づく損害賠償請求訴訟)を提起することになります。

どちらの訴訟形態によるかは事案次第ですが,私は基本的に不当利得返還請求と構成して提訴しています。裁判所の説明(3-3の第2項参照)も不当利得返還請求となっています。立証すべき事項が若干異なること,遅延損害金の起算点が異なることなど多少の違いはあると思いますが,消滅時効の関係で不当利得返還請求のほうが有利であることから,基本的には不当利得返還請求をすればよいと思います。

請求金額は,「無断で引き出された金額×ご自身の法定相続分」となります。

 

② 被相続人から財産管理を任されて預金を引き出していた場合

実務的にはこのケースが多いと思いますが,この場合は,被相続人の委託の趣旨に適合する引き出し(支出)であれば,法律上の根拠のある正当な支出となり,不当利得返還請求などを行うことはできません。

委託の趣旨に含まれない支出をした場合には,その部分については不当利得となりますので,①と同様に不当利得返還請求(又は不法行為に基づく損害賠償請求)を行うことになります。

預金を引き出していた側(被相続人の面倒を看ていた側)からすれば,「ずっと面倒を看ていたのに何でこんな請求をされるのか!面倒を看ていなかった相続人の分際でこのような請求をするのはけしからん!」と憤慨される方が非常に多く,心情的にはとても理解できます。

しかし,法律上は,「法律上の原因に基づく支出であること=委託の趣旨に基づく支出であること」を立証するか,あるいは「自分が引き出したのではない,又は自分の利益には使っていない=自分が利得していないこと」を立証しない限り,返還せよという判決が下される可能性が高いと思われます。

財産管理を任されている相続人としては,相続開始後に上記のような返還請求を受けても困らないよう,①財産管理を任されたことを書面化しておく(財産管理委託契約書を作成し,どの範囲の財産をどの範囲の使途で使ってよいと管理を任されたのかを明確にしておく),②契約書の作成時に被相続人の判断能力に問題がなかったことを裏付ける資料を残しておく(契約書作成時の様子を録音・録画しておく,判断能力に関する医師の診断書を取っておく等),③日々の引き出しの使途を通帳に書いておく,④領収書を保管しておく,等の対策を取っておくことが肝心です。

「被相続人の面倒をずっと看てきたのに・・・」と嘆かれる方がいらっしゃいますが,残念ながら,上記訴訟においてそのような主張をしても有効な反論にはなりません。

「被相続人の面倒を看てきたこと」は民法上の寄与分(民法904条の2)として考慮されますが,寄与分の主張は,「遺産分割協議において面倒を看てきた相続人の相続分(取り分)を増加させる」という効果しか持ちません。

不当利得返還請求のような一般民事訴訟で寄与分を主張しても,残念ながら,相手の請求金額を減らすという法律効果は生じさせてくれないのです。この点は注意が必要です。

 

③ 被相続人から贈与を受けて引き出しをしていた場合

預金を贈与されていた場合であれば,遺産分割協議において特別受益(民法903条)として考慮してもらい,贈与を受けた相続人の相続分(取り分)を減らすことになります。

なお,この場合はそもそも,預金を引き出した相続人が贈与を受けたと立証すること自体が困難なケースが多いと思われます。親族間贈与の場合,書面を作らないケースが多くありますし,贈与税の申告もしていないというケースも多くあるため,客観的証拠によって贈与を立証することは困難なことが多いです。

仮に贈与を立証できない場合,①と同様に不当利得返還請求を受ければ,法定相続分は返還しなければならないということになるでしょう。